OKA ATSUSHI archives

岡 敦 archives

ヘッセ『車輪の下』を読む

筆者:岡 敦題名:ヘッセ『車輪の下』を読む(生きるための古典 13)初出:「日経ビジネスオンライン」2011年7月26日 青春小説の傑作 ヘルマン・ヘッセ(1877―1962)はドイツの詩人・小説家。彼は29歳のとき『車輪の下』を書いた。それは今も「青春小説の傑…

最後の会話

筆者:岡 敦題名:最後の会話初出:「日経ビジネス電子版」2020年8月6日 兄と最後に話をしたのは、いつだったろう。 七月の中頃、兄が再入院(最後の入院)する前だったろうか。 たしか、ぼくは自分の部屋のなか、机の前に立ち、茶色いドアにぼんやりと視線…

ヴェイユ『超自然的認識』を読む

筆者:岡 敦題名:ヴェイユ『超自然的認識』を読む(生きるための古典 12)初出:「日経ビジネスオンライン」2011年7月12日 消えない問い いつまでも問い続ける。 なぜ? そうつぶやいて、気持ちが宙をさまよう。 なぜ…… またつぶやいて……一歩も先へ進めない…

パスカル『パンセ』を読む

筆者:岡 敦題名:パスカル『パンセ』を読む(生きるための古典 11)初出:「日経ビジネスオンライン」2010年11月16日 L字型の袋小路 幼い頃、ぼくは都内の小さな路地で暮らしていた。両側に民家が並ぶ、「L」字型に曲がった袋小路だ。ここに車は入ってこ…

明るい庭の小さな兄

筆者:岡 敦題名:明るい庭の小さな兄(すべてはいつか、笑うため。 4)初出:月刊『Hanada』2020年10月号 あれは兄がまだ幼稚園児だった頃、そしてぼくは……いくつだったのだろう。 夏のよく晴れた日の午後、ぼくは薄暗い畳の部屋で昼寝をさせられていた。…

ぼくが生まれた日の父のこと

筆者:岡 敦題名:ぼくが生まれた日の父のこと(すべてはいつか、笑うため。 3)初出:月刊『Hanada』2020年8月号 ぼくはときどき考える、ぼくが生まれた五月の朝、いったい父はどこにいたのだろう。 初めてのこの世の昼と夜を過ごし、翌日が暮れ、翌々日も…

中学生のニーチェ読解

筆者:岡 敦題名:中学生のニーチェ読解(すべてはいつか、笑うため。 2)初出:月刊『WiLL』2011年8月号 中学三年の終わり頃、ニーチェの『善悪の彼岸』を手に取った。 哲学の本などほとんど読んでいなかったくせに、(おそらく高校生の兄に感化されて)ぼ…

「すべてはいつか、笑うため。」のこと

筆者:岡 敦題名:「すべてはいつか、笑うため。」について(すべてはいつか、笑うため。 1) 「すべてはいつか、笑うため。」は、私の兄(岡康道)が書いていた連載エッセイのタイトルです。 この連載は、月刊『WiLL』2005年1月号から月刊『Hanada』2020年…

クートラスの作品に

筆者:岡 敦題名:夜の漂着物(クートラスの作品に)初出:佐伯誠・須山悠里・山内彩子編「Coutelas Journal」5号、2010年8月8日(須山悠里編『Coutelas Journal』エクリ、2010年 所収) ロベール・クートラス(1930-1985) パリで生まれパリで没した画家。…

ユイスマンス『さかしま』を読む

筆者:岡 敦題名:ユイスマンス『さかしま』を読む(生きるための古典 10)初出:「日経ビジネスオンライン」2009年12月8日 高級な引きこもり 『さかしま』は、「デカダンスのバイブル」とも呼ばれる奇妙な小説だ。1884年刊行、作者はジョリス・カルル・ユイ…

『今昔物語集』を読む

筆者:岡 敦題名:『今昔物語集』を読む(生きるための古典 9)初出:「日経ビジネスオンライン」2010年8月24日 今昔物語集 『今昔物語集』は、平安時代の末期(12世紀の初め)に成立した仏教説話集だ。作者未詳。書き出しはすべて「今は昔……」で統一された…

デュルケーム『自殺論』を読む

筆者:岡 敦題名:デュルケーム『自殺論』を読む(生きるための古典 8)初出:「日経ビジネスオンライン」2010年6月2日 大学の教室で 今から数十年前、ぼくが二十歳前後のときだ。 大学の教室で、ぼんやりと講義の始まりを待っていると、友人がひどく真面目…

『エピクロス』を読む

筆者:岡 敦題名:『エピクロス』を読む(生きるための古典 7)初出:「日経ビジネスオンライン」2010年4月13日 ぼくは外出に手間がかかる 外出するとき、ぼくは、ひどく手間と時間がかかる。 ガスの火は消えているか。蛇口から水が出続けていないか。 そん…

フロイト『精神分析入門』を読む

筆者:岡 敦題名:フロイト『精神分析入門』を読む(生きるための古典 6)初出:「日経ビジネスオンライン」2009年12月22日 ぼくは、なぜ、ここにこうしているのだろう 気がつくと、ぼくはここに立っていた。 ぼくがこのような仕事をして、こんなふうに生活…

プラトン『ソクラテスの弁明』を読む

筆者:岡 敦題名:プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(生きるための古典 5)初出:「日経ビジネスオンライン」2009年11月24日 死刑判決 その昔、ひとりの男が裁判にかけられた。 彼は哲学者。 かけられた容疑は次の二つだ。 1・この国の神々を大事にして…

カミュ『ペスト』を読む

筆者:岡 敦題名:カミュ『ペスト』を読む(生きるための古典 4)初出:「日経ビジネスオンライン」2009年7月21日 ※本稿では、医療に関わる制度やその運用、政策などの問題は考慮していません。患者やその家族といった、個人レベルでの病気の受け止め方の話…

ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む

筆者:岡 敦題名:ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む(生きるための古典 3)初出:「日経ビジネスオンライン」2009年7月7日 決定的な体験 たとえば、ある晴れた夏の日の正午。 窓越しに庭に目をやると、樹がゆっくり大きく音もたてずに揺れている…

はじめに 「できそこない」のためのブックガイド

筆者:岡 敦題名:はじめに 「できそこない」のためのブックガイド(生きるための古典 2)引用:岡敦『強く生きるために読む古典』集英社新書、2011年初出:「日経ビジネスオンライン」2009年6月9日 生まれて初めての外国旅行なら、きっと誰でも、二十四時…

「生きるための古典」について

筆者:岡 敦題名:「生きるための古典」について(生きるための古典 1) 「生きるための古典」は、日経BP社のウェブマガジン「日経ビジネスオンライン」(現在の「日経ビジネス電子版」)に連載した文章です。2009年6月から2012年3月までのおよそ2年9か月の…

このブログの内容

筆者:岡 敦題名:このブログの内容 以前に雑誌やwebに掲載された自分の文章を集めて、このブログに再掲載していきます。更新は不定期で、長い間があくこともあるかもしれません。 ・書籍化/電子書籍化されている文章は載せません。 (その本が現在入手困難…